設立挨拶

奥山保全・復元・再生(生物多様性・水源涵養機能等)に向けて、国の政策を転換させるため、奥山研究者の発掘・育成をめざす

                                                     

日本奥山学会 会長 森山まり子
   (日本熊森協会 会長) 

 

絶滅寸前のクマたちが教えてくれた奥山の危機

1992年、わたしたちは新聞記事によって兵庫県のツキノワグマが絶滅寸前に陥っていることを知りました。当時、わたしの教え子たちだった尼崎市の中学生たちが、クマ達の絶滅を止めてやりたいというやさしい気持ちを起こし、いろいろと調べました。

 その結果、本来のクマたちの生息地で あった広大な奥山原生林(正確には、原生的自然林)が、第2次世界大戦後の「奥山開発」や林野庁による針葉樹一辺倒の植林政策、「拡大造林」によって、大面積が失われていることを知りました。

 えさ場もねぐらも失った動物たちは生きていられなくなって、食料を求め、山から次々と出て来るようになりました。まさに、「クマをはじめとする絶滅寸前の野生動物たちが教えてくれた奥山の危機」です。また、人間の手が入った

奥山では、それまで保たれていた自然生態系の絶妙のバランスが崩れてしまっています。

  しかし、広大な人工林内の砂漠化や生物の多様性喪失などの奥山荒廃は、山を外から見ているだけではわかりづらく、ほとんどの国民はいまだに

この実態に気づいていません。


国の奥山政策を方向転換させるための科学的データと論文

  国は、国策による奥山大荒廃問題が明るみに出ないよう口をつぐんでおり、国策の方向転換ができずにいます
 
わたしたちは、担当部署の責任を追及するのではなく、全生物のため、子々孫々のため、官民一致協力して奥山の保全・復元・再生にあたっていくべきだと考えます。
 
荒廃した奥山では、雨が降るたびに、今も表土が流出しています。表土を失えば森の復元・再生はむずかしくなります。手遅れになる前に、一日も早い奥山自然林復元・再生への取り組みが求められています。
 
わたしたちの祖先が、かつて奥山の自然を守ることができたのは、自然や野生鳥獣への畏敬の念や共感、人間としての厳しいモラルを持っていたからであり、難しい学問研究があったわけではありません。
 
しかし、今、国の奥山政策の方向転換を実現させるには、科学的でデータを蓄積し、論文として発表していくことも必要であるとわたしたちは考えるようになりました。この度、完全中立で、研究者が良心を失わずに自由に研究発表できる学会を設立しました。

対症療法ではなく根治療法を

  現在、我が国におけるこの分野に関する多くの研究は、人間が自然界を思うようにできるという誤った考えの上に立つ西洋のワイルドライフマネジメント手法に基づくもので、野生鳥獣の頭数調整や大量捕殺装置の開発、野生鳥獣による農作物の被害防除柵の研究、このような対症療法にばかり偏っています。
 しかし、わたしたちが今一番行うべきことは、人間が大荒廃させてしまった奥山を、いかにして生物の多様性が保たれた保水力抜群の豊かな森に復元・再生させるのか、それによって、今人里に出て来て、地元の人たちを困らせている野生鳥獣たちを、いかにして再び山に帰られるようにして棲み分けを復活させるのか、また、わずかに残された原生林までもが急速に劣化してきている現在、その原因を究明し、劣化を止める方法を見つけ出すなどの根治療法なのです。


開かれた日本奥山学会
  当学会は、外部に開かれた学会です。広く募集を行い、高い倫理観を持った多くのすばらしい奥山研究者が多々発掘・育成されるよう、使命感を持って、学会発展の為に尽くしてまいります。